実際にあった事件をヒントにした松本清張原作のサスペンス映画。
夫婦が乗っていた自動車が海に転落し、夫は死亡、妻だけが助かる。
夫には3億円の保険金がかけられており、自動車事故と見せかけた殺人容疑で妻が逮捕される。
そして、その妻役を演じるのが、桃井かおりなんだけれど、その悪態ぶりはお見事の一言に尽きる。
この映画の5年前に公開された「幸福の黄色いハンカチ」において、武田鉄矢の恋人役で見せたどこか優柔不断で気弱な女性とは真逆のキャラクターである。
そのキャラクターの変貌に、まさに<女優魂>を見せつけられたようである。
そして、その妻の弁護人を演じるのが岩下志麻。
鉄仮面のごとく、冷静かつ淡々と検察側の立証を崩してゆく。
結果、逆転で無罪を勝ち取り、映画の最終盤で桃井かおりと岩下志麻が赤ワインで祝杯をあげるのだけれど、祝杯ムードもどこへやら、だんだんと険悪状態になっていき、お互い赤ワインを掛け合うバトルに発展する。
そう、このバトルだけを見たさに、この映画を鑑賞したと言っても過言ではない。
それほど、映画史に燦然と輝くシーンだと思う。
およそ40年前の映画ゆえに、ちょっと、古臭さが残るものの、全体的にはいい映画だった。