帰りの電車の中。
僕の近くに男女二人。
恐らく会社の同僚。
男が一生懸命喋っている。
女は聞き役に徹し、自分からは話題を振ろうとしない。
暫くして、男が話題に窮す。
長い沈黙。二人の間に流れる微妙な空気。
そばに居た僕はいたたまれない気持ちでいっぱい。
そうこうしているうちに、電車が女の下車する駅に停まった。
「おつかれー」「おつかれさまでした」
形式だけの空虚な挨拶。
ドアが閉まり、電車が動き出した際に見せた男の安堵の表情が忘れられない。