Life is very short

人生なんてあっちゅうま

鬼畜

 

今更ながら、松本清張著の<鬼畜>を読んでみた。

 

<鬼畜>というタイトルから、<八つ墓村>のようなもっと残虐なストーリーを想像していたけれど、女房に頭が上がらない男のお話で、少し拍子抜けしてしまった。

 

しかし、妾に3人の子供を産ませ、その上、女房に歯向かえない気の弱さゆえに、やっていることは<鬼畜>そのものなので、あながち間違ってはいない。

 

そして、妾や女房も男以上に相当な<鬼畜>である。

大人たちの都合で翻弄される子供たちが不憫でたまらない。

 

人間の弱さや脆さ、そして狡猾さが入り交じり、破滅していく様を平易な言葉とテンポ良い筆致で描いている、まさに松本清張らしい作品である。

 

松本清張と言えば、<点と線>や<ゼロの焦点>のような長編小説も面白いけれど、本作ような短編も読んでいてグイグイ引き込まれてしまう。

 

緒形拳主演の映画版も面白いという評判なので、いつの日か見てみたい。