僕が行きつけにしているサウナ室は広さが20畳ぐらいあって、上段と下段と2段に分かれており、大きな窓が付いている。
で、僕がサウナハットを被って上段のところで寛いでいると、70歳後半ぐらいのご老人がサウナ室に入ってきた。
そして、上段、下段、どちらに腰掛けるでもなく、窓枠に左肘を乗せ、上体を窓枠の方にあずける格好で、ずっと立っている。
特に混んでいたわけではなく、僕の他には1人上段のところに座っているだけだ。
『ここは立ち飲み屋か』
と思わず心の中で突っ込みを入れてしまった。
まあ、それはともかく、座る場所はいくらでもあるのに、立っているとは何とも奇妙だ。
なぜ立っているのか。
理由をいろいろ考えてしまった。
・膝が悪いのだろうか。はたまた腰が悪いのか
・それとも、痔なのだろうか。
・妻の初七日が過ぎていないのだろうか。
・足腰の鍛錬のためにあえて立っているのだろうか。
・電車に乗っても座席には座らない主義なのだろうか。
いつものようにいろんな妄想が頭の中を駆け巡る。
そして、そんなくだらないことを考えている間に、ご老人は5分ほどでサウナ室を出て行ってしまった。
「単に座るのが面倒臭かったのかなあ」
「いやいや、もしかしたら、他人の汗まみれの場所に座りたくなかったのかも知れないぞ」
ご老人が出て行った後も、僕の妄想は止まらなかった。