子供のころ、僕の故郷(いなか)にはまだまだ、遮断機のない踏切がいっぱいあった。
ある日、友達と遊んだ帰り道、僕が先頭で自転車を走らせ、遮断機のない踏切を渡ろうとしたとき、後方で「あぶなーい」と友達の叫ぶ声がした。
僕は自転車を停め、一瞬何が起きたのか、わからぬまま、友達の方へ振り返った瞬間、轟音を発しながら、特急列車が僕たちの目の前を通り過ぎて行った。
瞬く間に僕の頭の中は真っ白になっていく。
もし、友達が叫んでくれなかったら、そのまま、線路の中へと進んでいたかもしれない。
そう思うと、しばらくの間、体の震えが止まらなかった。
その友達と琵琶湖でおぼれた際に助けてくれたお兄さん は「命の恩人」として一生、僕の心の中に刻まれていく。