Life is very short

人生なんてあっちゅうま

返礼

 

大きな幹線道路のT字路で信号待ちをしていると、左方から1台のバスが通り過ぎようとしていた。

 

しかし、バスは前方がやや混んでいたためにちょうど僕の正面に停車する格好となった。

 

バスの側面には<sightseeing>の文字。

 

窓が一つ開いており、そこには外国人2人の姿が見える。

 

容姿から判断すると<中東アジア>系の人たちのようである。

 

<sightseeing>の文字を見て、「観光か・・・」と何気なく思っていると、外国人2人が陽気な笑顔でこちらに向かって手を振り始めた。

 

僕の両側には、年配の男女も信号待ちをしている。

 

しかし、明らかに僕の方に向かって手を振っているように見えた。

 

何だか、最初は恥ずかしくて、気づかないフリをしていた。

 

両側の男女も何の反応も示さない。

 

それでも、外国人2人は執拗に手を振るものだから、咄嗟に軽い会釈をしてしまった。

 

そうしたら、外国人2人は手を振るのをやめて、共に会釈を返してくれた。

 

そのタイミングでバスが動き出して、走り去っていった。

 

進行方向が"青"になり、横断歩道を渡りながら、頭の中は後悔の念が渦巻いていた。

 

やっぱり、あそこは絶対「手を振る」べきだったと。

 

外国人2人は「愛想の悪い日本人だな」と思っていたかも知れない。

 

もし、友達や知り合いといっしょだったら、きっと”ノリ”で手を振っていたはずだけど、さすがに一人では勇気が出なかった。

 

しかし、今度、同じようなシーンに出くわしたら、思い切って手を振ろう!

 

そう誓う気弱なおっさんであった。