CSでたまたま放映していたので、久しぶりに鑑賞。
遠い昔、初めてこの映画を見た時、アンニュイとでも表現すべきか、全体的に『かったるい映画だな』としか感じなかった。
しかし、年齢を重ねて、改めて見てみると遅まきながら傑作所以たることに気付かされる。
物語の随所に森田芳光監督の脚本、演出の妙が冴えわたっており、俳優陣がそれに対して、しっかりと応えて、シニカルな笑いに昇華させている。
恐らく初見で「かったるい」と感じたのは、登場人物は一様にボソボソ喋り、特段派手なシーンが登場するわけではなく、話が淡々と進んでいくだけなので、当時、血気盛んな年頃であった自分にはきっと物足りなかったのだと思う。
と同時に作品が言わんとすることに幼かったゆえに頭が追いついていなかったのかもしれない。
しかし、歳を重ね、それなりに人生経験を積んでくると、世の中の不条理さや悲哀も痛いほどわかってくるので、この映画の面白さも十分理解できる。
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先日、偶然にもこの映画のロケ地の今昔比較動画を視聴したばかりで、舞台となった団地(都営勝どき六丁目アパート)の周辺はかなり様変わりしていた。
周辺の工場は消え、現在ではタワーマンションが林立している。
しかし、団地はまだ、現存しており、何だかそこだけが時代に取り残されたようで、ある種、異彩を放っているような感じだった。
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まあ、とりわけ、伊丹十三の「チュウチュウできないじゃないか」というセリフを久しぶりに聞けて、満足した。
ちなみに母親役の由紀さおりが妙にエロく感じたのは自分だけだろうか。